悦びに咲く魔女 verse2 永遠という場所【魔法使いクエ】
拝啓 わたしに言葉を教えてくれた先生
華やぎを求めて街に出る、という事を教えてくれた先生。
いつか来る「その日」の為のこと以外は無駄と教えられて育ったわたしに、人間らしい心を教えてくれた先生。
季節にぴったりのローブとドレスのあいの子を出してくる仕立て屋さん
「いつもの」濃さでコーヒーを出してくれる喫茶店
季節の花が生き生き輝く花屋さん
先生の教えてくれる街は、華やぎに満ちていました。誰もが先生の事を知っていて、愛していました。
わたしもなんともなしに街をうろつく日があります。きっと先生のように華やぎを求めているんでしょう。この街に住んで、花を咲かせるまで。
またお手紙差し上げます。
山吹の花、散らないうちに。まにえら
ブシャーーーッ!!
無理矢理叩き込んだ魔力は魔物の中で炸裂し、なんとも汚い花を咲かせた。
指を鳴らせば赤い花がそこら中に咲く。
連鎖する爆裂系呪文。
霧散した花のあったところから、ゆらりと立ち上る煙。これをわたしの持つ布切れは吸い取った。
これで、よしと。
さて、わたしは件の宿に泊まりました。
鏡は再びぼんやり光り、「あの人」とわたしをつなぎます。
声はわたしの名前を覚えていました。相変わらずのノイズだが、これを解消できるらしい道具をよこしたのです。こいつが曲者で、魔物から魔力を吸い取らないと効果を発揮できないらしい。
メイジダスター。わたしもメイジなだけに、うーんなネームだが、パワーはありそう。
というわけで、さっきの場面。モンスター達を爆裂させて集めた魔力を使います。
あの姿。
わたしが持つ強い魔女のイメージなのか、それとも、なにかモデルがあるのか。
変身には意外にも難しい条件はなかった。いつでも、好きな時に、あの姿になることができる。
だからこそ少し、恐ろしい。御伽噺の目眩く奇跡の代償として存在する残虐な悪役。魔力の行使にはそれ相応の「対価」が必要。それは、あまりにも有名な魔法の基本。いづれ、それを支払うことになるだろう。
でも……
魔力を貯めた布で鏡をこすった。
おお、ちゃんと聞こえるようになった。
鏡の前の君はだんだんわたしのことが気になって来た、と言う。
そう。わたしはすでに、虜になっている。
こんなに話しているのに、あったことがないなんて。逢いたい。
鏡の君に。知りたい。あなたが何者かを。
そしてなにより
好きなだけ与え、好きなだけ奪える、美しい自分に、跪かせたい。
どうせいつか代償を支払う事になるなら
一番美しいわたしで
一番ワガママに振舞って
その華やぎの中で息絶えたい。
役割を終えたはずなのに終わらなかった命の証をたてたい。
身に余る力を与えられたわたしは、少しずつ、おかしくなってきていた。
狂おしいほど
羨ましかった、あの日々を
今のわたしなら、手に入れられる。