笑道 1幕 やろうと思ったら今すぐやれ!人生に保険なんてないんだよ!【旅芸人クエ】
うわー、サイアクだよー!!
オルフェア付近を散歩していたわたしは急な雨にやられて洞窟の中へ駆け込んだ。
なはは!水も滴るいい女っ!いよっ!来ちゃった!見つけちゃったよ!
おめえさん、いい空気もってるなぁ。
いきなり陽気な笑い声をかけて来たのはプクリポの男性。
ちょっとどこか抜けてるような子が、思いもよらない芸で爆笑を起こしたりする。
愛すべきバカってのは、いいもんだなぁ…
いつの事を言っているのだ?てゆうか私の生活を見てたのか?
ノリで家を買った時か?人間になった時黒ギャルで、みんなにイジられた時か?
思い当たる節が多すぎて頭を抱える。
プクリポは続ける
人をドカーンと笑わせられるバカは救うこともできるんじゃねえかってなぁ
バレンタインでイメチェン失敗した時か?白箱狩りでひたすら歌って踊ってて(MPが)キレられた時か?
記憶が混濁し始めた私を尻目にプクリポは大見得を切ってみせた。
おめえさんもオイラの弟子になってそんな旅芸人を目指してみねぇかなぁ!
一緒に芸で人を救っていこうじゃないか。
もし…
もし、そんな事が出来るなら、人はそれを奇跡と呼ぶんじゃないかな。
そんな私の内心を知ってか知らずか、プクリポは熱っぽい目でこちらをみながら、呟いた。
だからこそ、情熱を注ぐ意味があるんじゃないのかい?
ボケを成功させてからだいおうキッズを倒すってのはどうだい?
どうかなぁ、やってみるかなぁ
どうしてだろう。その瞳を見ていると胸の奥底から何かが芽吹くような、予感というかムズムズした感じを覚えた。そして私はやってみよう、と思っていた。
なはは!やっちゃう?そうだよねぇ
オイラ嬉しくなっちゃうよお!
そういや名前を聞いてなかったなぁ……
まにえら!なはは!いい名前!
頑張るよねえ?頑張ってなあ
出かけようとする私にプクリポが声をかけた。
待った!こいつを連れてってくれ。ザビエルってんだ。なあに、マネージャーみたいなもんさ。
そこに降りてきたのはなんともおめでたい格好をした「キメラ」だった。
あんたがまにえらさん?ども。ザビエルです。よろしう。
ここらでは聞かない言葉遣い。何者だこいつは?訳がわからない事ばかりだが、何かウキウキするものがある。
ボケというものは前にやった事がある。そう、武闘家の試練だ。あの時は、確か……
そう、呼吸だ。相手の呼吸を観察して驚かす要領で……こうだ!
だいおうキッズは大喜びで笑った。いないないばあと同じ原理か。
どうだ、とばかりにキメラを振り返る。
……白目を剥いてプルプル震えている。
まに、まにえらはん……て、天才みゃあ!!
ええもん見してもろたで!ウーッわろてんか!
何故かわからないがそれはダメな気がしたので事前に渡されたハリセンで叩くことにした。
すこぶるー!グレイト!それや!まにえらはん!その調子やで!!
何故かヨダレまで垂らし悦に浸るキメラのオッサンをなんとも言えない顔で見ていると
ケケケー見つけた
旅芸人ぽいやつ
皆殺し♪皆殺し♪
突然現れたのはグレムリン3体組。
職歴上、「殺す」という言葉に反応して睨み返した。殺意には、殺意で返す。このくらいの相手なら、衝突は起こらない。
案の定、連中はビビって引き上げていった。
そこにヤレヤレといった様子でキメラのオッサンが降りてきた。
まにえらはん。あきませんわ。それは芸人のする事やない。ま、それも含め覚えていきましょ。
私のメンチ切りにザビエルは苦言を呈した。
なんでだ?バトルにならなかったんだから、御の字じゃないか?
全く、よくわからないやつだな。
出迎えたプクリポは開口一番
これでおめえさんは晴れてオイラの弟子になれたわけなんだなあ
なはは。オイラうれしくなっちゃうよお
そういうプクリポ、いや、ししょーは心底嬉しそうだ。
おめえさんはでけえ旅芸人になるからなあ
もっと強くなってたくましくなれよお
これはかる~いオイラのきもち。
そう言って服を一揃え渡してきた。
ししょー曰く最近、旅芸人が行方不明になっているらしい。
ししょーは昔のケガのせいで戦えない。旅芸人達を守ってほしいと言われた。
ししょーに渡された「きもち」に袖を通す。
なはは!よく似合ってるじゃないか。
今日からは旅芸人のまにえら!涙目のまにえらって名乗りな!
涙目ってのはな意味があるんだ。
それがわかるようになったら、一人前だな!
ま、今の私にはピエロっぽいっていうことしかわからんが。
そんなわたしにししょーは呟くように語りかけた。
おぼえておいてくれよ、まにえら。
芸は人を救えるんだぜ。
それが本当ならどれだけいいことか。
まーいい。しばらくはこの辺でウロウロするとしよう。