青のキーエンブレム
その日、私は使命を思い出したわけで。私は町長に言いました。
町長さん、キーエンブレムが欲しいんだ
おーそうかよし、渡してやるぞと。ただし、それは街に貢献してからだと。
それはそれはダンディに町長はわたしに言いました。
その場で紹介されたトンガリ帽子の男、城下町の調査員キンナー。説明しましょうと言うなり一回転を決めて来た。
かっこいいですね、とわたしが言うと帽子を被ったキンナーは、自慢げな様子で、週末はダンシングに精を出しているんです、とスピンを決めながら言うので、どついてやりたい気持ちを抑え、お困りごとは何ですか?と聞きますと
用心棒です。けど大丈夫ですかねぇ
などと抜かしおるので、私は一気に沸点に達して
おいコラ!私は格闘100のばくれつ勢だぞ!
と言ってやると尖った帽子のキンナーはキラッキラした目で私を見つめ
ではお願いしますと。
その後大した問題もなく尖った帽子のキンナーを遺跡へ連れて行くと、それはそれは大きな音叉が何本もそそり立つ場所へと彼は走っていった。
ウェナ諸島は女王の歌声で平和が保たれ、諸島中で音叉がそれを拡大している、平和を祈ることを一人義務付けられているなんて、女王さまは囚われの姫みたいだな。
いつか御付きの神官がクーデターを起こし、女王を花の檻に閉じ込めその重責から解放しようとする日が来るかもしれない。
そんなことあったらなぁ……なんて余計な事を考えていると微かに、次第にはっきりと澄んだ歌声が聞こえて来た。
歌は甘美な響きを海面に伝え、海は喜びに震え波立つ。沈みゆく陽をその身にたゆたえ、ウェナの一日が終わってゆく。
(すごく……大きいです……)
これはキーエンブレムいただきですわと報告すると髭の町長に適当な理屈をつけられてネコ属とのいざこざを仲裁する事になった。
何だかんだで一緒に行く事になったヒューザという青年。なんか真っ当かつイケメンで、目を離すとすぐ英雄的な死に方をしそうでちょっと危なげ。この感覚、わかるかしら……
保護していた仔猫を連れて行くと、タカ派のネコがその謀略を語り、牙を向いて来た。
難しい話はよくわからんが、大人のいざこざに子供を(それも赤ん坊を!)巻き込む奴は、どんな事情であれわたしがブッ飛ばす。それだけ。
(みぞおち、ドーン!)
…ていうか、キャット・マンマー!
やばいやばい。どうして私を産んでくれなかったの!わたしはマンマーみたいな母性に弱いんだ!
親子の感動の対面に赤子還りをしかけたところをヒューザにどつかれ、正気に戻る。
(ママ~ woo woo~)
報告をしに帰るとヒゲは「私が町長です」などと抜かしやがるのでちょっと強めにツッコミを数発入れるとヨロヨロとエンブレムを取り出した。こうして、無事、この町での一応の使命は果たした事になる。
ヒューザはエンブレムを受け取らなかった。俺は俺自身の力だけで運命を切り開いてみせる、みたいなことを言って去っていった。そういうとこだぞ、とおねえちゃんは思うんですけど、そういう気持ちわかってくださるかしら。
(私が町長です)