でんせつのゆうしゃのおはなし(中編)
目が覚めた。何か嫌な夢を見ていた気がしたが、忘れてしまったようだ。
おそらく飲み明かしたのだろう。馴染みの店の一番奥の席、テーブルから身を起こし、気怠げにカウンターへ向かう。
お水ぅ、下さい。
しょうがないわねぇ
呆れた様子で店主が水を差し出す。これがどういうわけかいつもキンキンに冷えていて格別にウマい。
くぅ~これこれこれ!
水の冷たさが体の隅々まで行き渡ると、ようやく目が覚めたような気分になる。と、同時に空腹感がやってきた。何か食べよう。テーブルに戻る。テーブルには3人の男。
ゆうぽん、すぎやん、アキーラ。気のいい飲み仲間だ。私たちはこうして日がな一日、伝説の勇者なる人物を待っているのだ。彼らが語る冒険物語を聞きながら。今日はなんの話をしようか。空から墜落した天使の話の続きをしようか?
(左の人物は特に関係ない人です。)
そして、現れた、勇者もょもと。今日16歳の誕生日を迎えたとは思えない圧倒的な巨躯とサバイバル知識。充実した装備。そして覆面!!
勇者とは、生まれた時から勇者なのだという事を体現していた。
さぁ、旅立とう。酒場から出れば天から注ぐ精霊の導き。虹の雫さえあれば大魔王の下まで一瞬で飛べる。
……だが、待って欲しい、「コレ」無しではどうなるのだろうか。
不意の衝動に衝かれたわたしは皆を押しのけて、主張した。自分たちの足で、大魔王の下までたどり着いてみせます。と。
わたしたちが包まれていた光が消えると何故か賢者から遊び人になっていたすぎやん。のどかなアリアハンの街並み。そういえば、わたしの職業はなんだったっけ?こういう時に便利な自称職がある。旅芸人だ。そうそう、わたしは旅芸人だった気がする!
勇者発祥の地、アリアハン!奇妙な5人組の旅が始まる!
(続きます)